第211話 情報化社会の中で
暑かった夏も終わり、やっと涼しくなりました。過ごしやすい気候が続いていますので、小児科の外来はこの時期にしては珍しくのんびりしています。例年と違って、この夏は手足口病やヘルパンギーナといった夏風邪のお子さんを診察する機会が少なかったように思います。温暖化の影響なのかどうかはわかりませんが、季節感がなくなったように感じることが多くなりました。
最近は色々な情報を瞬時に入手できるようになりましたので、受診される保護者の方もよく勉強されて来られる方が増えてきました。ただちょっと調べすぎじゃないと思うことはよく経験します。「この病気じゃないでしょうか?」とお尋ねされることがありますが、よくそのようなことまで調べて来られたなとびっくりすることも珍しくはありません。例えば発熱で検索すれば白血病というキーワードが出てくることは普通にあるようです。もちろん発熱が白血病の初発症状であることは間違いではありませんが、発熱だからといっていきなり白血病を考えることは普通ではありません。色々と検査などを行なって最後に鑑別として挙がってくるのが白血病ですから、調べすぎるのも不安を助長するだけで好ましくはないのかも知れません。
それからワクチンについても色々なサイトが実在するようです。自分で検索したことはありませんが、ワクチンについて否定的なサイトも少なからず存在しているのは間違いなさそうです。ただ、そこに書かれていることが全て正しいとも限りませんので、溢れかえる情報をいかに取捨選択するかというのは重要なことになってきます。ネットでいろいろ調べることは悪いことではありませんが、例えばワクチンのことについて知りたいのであれば、まずはかかりつけの小児科医に聞いてみるのが一番だと思います。最近はワクチンも日々進化しており、開業した20年前とは驚くほど変わってきています。なかなかどう進めていけばいいかわかりにくいこともありますので、何を接種したらいいのか、接種間隔はどうなのかなど、かかりつけの小児科医に聞いてみられたらきちんと説明してくれると思います。
11月に入ってこれから寒くなってくると、例年だとインフルエンザが流行してきます。ニュースでも既に流行してきましたというのが流れてきますが、地域差があるのも気をつけなくてはいけません。幸い、熊本ではまだそこまで流行というのはないようです。その代わりにマイコプラズマが流行しています。しかも九州ではなぜか熊本で大流行しているようですが、他の県では熊本のような流行は見られないという、何とも不思議な現象が起きています。もしかしたらこのような情報はネットでは入手できないかも知れませんので、毎週発表される新聞の感染症情報はお役に立つのではないでしょうか。また最近では当院の感染症情報をチェックされている方も増え、見たらこれが流行っていると書いてあったのでといって受診されるお子さんもいらっしゃいます。
最近多くの情報が一方的にばんばん入ってくるようになりました。携帯を開けばありとあらゆる情報を入手することが出来ます。知ろうとしなくても目に飛び込んでくることも少なくはありません。これからはそのような状況からいかに正しい情報を入手して役立てていくかというのが大事になってきます。最近はどうも情報に踊らされてしまうことも少なくありませんので、今後ますます情報化社会の中で生活する際にはきちんとした判断が求められます。便利とはいえ、大変な世の中になってきました。
【令和7年11月】
よしもと小児科 吉本寿美







