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第198話 協力する

小児科医のつぶやき|第198話 協力する

 今回のパリオリンピックは、日本人選手の活躍で興奮して連日寝不足の方も多かったのではないでしょうか。残念ながら期待されたような結果が出せなかった選手もいたようですが、結果はあくまでも結果であってそこに至るまでの過程や努力が無駄だったということは決してないと思います。ですので、たとえメダルに届かなかったとしても、何ら恥じることはないのです。自分は今回、いろいろな選手が協力して頑張っていた団体競技に注目していました。誰か1人が欠けても結果は残せませんので、団体競技で獲ったメダルというのはものすごい価値があると思います。4年後には野球も復活しますので、今から金メダルを期待しています。    


 協力するといえば、我々の仕事も協力することはとても重要なことです。絶対に一人でやっていけるような仕事ではありません。小児科は子どもさんが相手ですので、診察するにしたっては、どうしても看護師さんの介助が必要になってきます。採血や点滴とかの処置ともなれば、2.3名の介助が必要です。たまには大暴れするようなお子さんもいらっしゃいますので、そうなるとスタッフ総出で対応というような状況になる場合もあります。ただ医療以外の仕事にしても、協力しながらやっていかなければ出来ないことはたくさんあると思います。改めて仕事においてもチームワークは重要なのだというのを感じています。


 そしてご存じの方も多いかと思いますが、今月から熊大の後輩に当たる橘先生が光の森に「光の森こどもクリニック」を開業されました。先日内覧会にお邪魔しましたが、さすがに綺麗でコンパクトにまとまった素敵なクリニックでした。最近は菊陽町も小児科医が減っていましたので、ちょっと安堵しました。自分もいつまで続けることが出来るか先のことはわかりませんので(まだまだ頑張るつもりではいますが)、これからは協力して町のために一緒に頑張っていこうと思います。幸い当院が水曜午後は休診ですが橘先生は診療されていますので、何か困ったことがあれば優しい先生ですから診察してもらってもいいかもしれません。  


 ただ困ったことに、周辺では耳鼻科の先生が少なくなってしまいました。光の森にあった耳鼻科の先生が閉院されてしまい、困っていらっしゃるお子さんも多いようです。小児科と耳鼻科は子どもさんを対象にすることが多いので、以前は患者の奪い合いみたいなこともいわれていました。でもこれは避けたいところで、自分が手に負えないと思ったら適切な医療機関に紹介すべきだと思っています。以前はひどい中耳炎のお子さんが結構いらっしゃいましたが、最近はワクチンのおかげで少なくなりました。どんな抗生剤を使っても治らないという中耳炎のお子さんについては、耳鼻科の先生に紹介して助けていただいたことも以前は多かったように思います。これからも小児科と耳鼻科は協力していくことが子どもたちのためには大事だと思います。昔から言われていることですが、「手放す勇気」を持つことも医者には必要なことです。    


 この歳になってくると、改めて人は一人では生きていけないことを実感しています。いろいろな方の協力があって、仕事もプライベートも何とかやっていけるのだというのを感じています。若い頃は他人には頼らなくても一人で生きていけると強がっていた時期もあったように思いますが、最近はそれが決してそうではないというのがわかってきました。協力することの大切さが身に沁みてわかるようになってきました。以前より少しは大人になったのかもしれません。  



【令和6年10月】
よしもと小児科 吉本寿美

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