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第84話 幸せとは

小児科医のつぶやき|第84話 幸せとは

 新年度が始まり、いろいろな変化が周辺で起こっている方も多いのではないでしょうか。我が家も次女が大学進学の為家を出ましたので、残るは息子だけになりました。寂しくなりましたが、子離れしないといけない日がいつかは来ますのでこればかりは仕方ありません。まあ、娘とは家にいてもあまり喋ることはなかったので、あまり変化がないといえばそれまでですけど。


 それでこの季節になるといつも思うのですが、受験生の合格は果たして幸せなのだろうかと。確かに合格するに越したことはありませんし、合格は素晴らしいことなのですが、最近では浪人を避けてランクを下げてまで現役合格を目指す受験生が増加したそうです。そのあおりを食ったのが言うまでもなく、「代々木ゼミナール」を始めとする予備校ということになります。浪人というと、やはり暗いイメージなのでしょうか。でも浪人を2回経験した者から言わせてもらうと、今振り返れば以外と楽しい時間だったように思います。今だから言えることなのかもしれませんが、人生のプラスになったのは間違いありません。自分についていえば、不合格によって医者の道を選ぶことになったので今となっては幸せなことだったのかもしれません。


 ただ、医者になったのが幸せかといえば、それもまた100%幸せとも言えないようにも思います。皆さんがイメージされているような高給取りということは決してなく、安い給料で昼夜も関係なく働き、ボーナスなんか貰ったこともほとんどなく、結婚しても週末も仕事というのが当たり前の世界でした。誇張でもなく、これが現実なのですから。もちろん、仕事のみに関していえば間違いなく幸せです。子ども達が元気になっていくのを見ることが出来ますし、成長の過程を見届けることが出来ます。それでも生まれ変わったらまた医者になるかと聞かれたら、どうでしょうか。昔よりかなり勉強しなければならなくなっているようですので合格できるかどうかわかりませんが、もし合格できたらまた医者になるだろうとは思います。


 それから病気になった場合は不幸でしょうか。確かに、病気になることが幸せとはとても言えません。しかし、病気をするといろいろな人が手を差し伸べてくれますから、人のありがたみというのを知ることが出来ます。一人で生きている訳ではないというのを実感できるでしょう。家族の愛というのを改めて知ることも出来るでしょう。そういう意味では幸せと言えるのかもしれません。仕事をしている人は、ゆっくり休むことが出来ますからこれも幸せなのでしょうね。僕は病気した時には、「神様がきっと休みなさいと言ってくれているのだろう」と思うようにしています。そうすれば仕事を休んでも悪いなと思わなくて済みますから。


 つぶやき原稿を読み直してみると、毎年この時期になると同じことを書いているように思います。本当にこの歳になれば人生とは何がいいのかは最後までわからないなというのを最近改めて思います。自分自身は、2浪しなければ間違いなく工学部に進学していましたから、もしかしたら当時人気のSONYに入社していたかもしれません。そのSONYが今や経営の危機に陥っているとは、当時は誰も予想しなかったでしょう。実はパイロットにもなりたかったのですが、もしJALに入社していれば結構大変だったでしょう。事実、パイロットの兄は結構大変そうですし、見た目ほど華やかな世界ではないようですよ。


 この4月から新しい生活が始まる方も多いと思います。新しい土地で生活が始まる方もいらっしゃると思います。人生とはうまくできたもので、悪いことばかりではありません。逆にいいことばかりでもありません。神様は平等にその機会を与えてくれています。残念ながら苦汁を舐めた受験生の皆さん、この経験はきっと人生のプラスになるはずですから、頑張っていきましょう。結局何が幸せかと考えた場合に、人によって幸せの基準はいろいろあるでしょうが、普段は気づく事のない「平凡」というのが一番ではないかなと思います。



【2015年4月】
よしもと小児科 吉本寿美

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