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第161話 顔晴れ

小児科医のつぶやき|第161話 顔晴れ

 東京オリンピックが終わりました。今回は直前にいろいろな問題が勃発したり、異例の状況下での開催だったこともあり、開催の是非までもが問われたりもしましたが個人的には開催されて良かったのではないかと思います。期待通りの結果が出なかった競技もありましたが、メダルの数からいえばこれまでで最高の結果だったことを考えれば、選手の皆さんは本当に頑張ってくれたのではないでしょうか。      


 今回は残念ながら、ほとんどの競技が無観客試合だったため選手への声援という後押しが出来なかったのは、非常に残念でなりません。終盤の体力的にきつい場面での声援は、選手の力を引き出してくれると言われています。例えばサッカーだと後半きつくて走れないような状況でも、サポーターの後押しがあると不思議と力が湧いてくるというのは、選手の皆さんからよく聞く話です。もしかしたら、今回のオリンピックでも会場の観客の声援があったらもっとメダルの数は増えたかもしれません。大声援というのは相手チームにとってもプレッシャーになるはずですから、満員の会場での試合というのを観てみたかったような気もします。     


 ところが、「がんばれ」という言葉は避けたほうがいい場合もあるようです。開業前は小児のがん患者さんの診療に携わっていたのですが、普通だと我々は子どもたちに「がんばれ」と言ってしまいます。ところが、病気の子供たちはそれまでにもいろいろと頑張ってきていますので、「これ以上どう頑張ればいいんだろうか」と思ってしまう事があるというのを聞いた事があります。良かれと思ってかけた言葉が、人によってはそうでもないケースもあるんだなと思いました。    


 ただ、個人的には「がんばれ」という言葉は好きです。ご存知の方も多いかと思いますが、「がんばれ」は「顔晴れ」と書くこともあります。「頑張れ」は我慢してやり抜き自分の意思を貫く事という意味だそうです。一方で「顔晴れ」は最後に顔が晴れるように、笑顔になれるように今をしっかりやりきるという意味が込められているそうです。「顔晴れ」の方が何となく頑張らなきゃいけないって思えるような気がしますが、皆さんはどんなでしょうか。    


 現在、このような世の中の状況ですが、みんな頑張っていると思います。連日報道で頑張って下さいと連呼されますが、さてどんな風にすればいいのかなと思ってしまう事があります。子供たちの健康を預かっている仕事ですので当然頑張るしかありませんが、仕事から離れれば普通の人間ですので頑張れと言われてもあまりピンとこないこともあります。外出をはじめいろんな行動を自粛せよということかなと思いますが、さすがにゴールの見えない状況で頑張れと言われてもちょっと厳しいなと、若者はじめ多くの方が思っているのではないかと思います。      


 今もまだまだ終わりの見えないコロナとの戦いが続いています。いつになれば以前のような普通の穏やかな生活を送る事が出来るようになるのか、誰にも答えはわかりません。それでも「明けない夜はない」と昔からよく言われています。見えない敵との戦いは非常に辛くて長い時間を要すると思いますが、明るい未来を取り戻すためあと少しだけみんなで「顔晴って」いきましょう。   



【令和3年9月】
よしもと小児科 吉本寿美

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